富士山での遭難事故が報道されるたびに、「外国人の遭難が多いのはなぜ?」「富士山を甘く見ているの?」と疑問を持つ人が増えています。
ただし、このテーマは感情論になりやすい一方で、実際には訪日客(登山希望者)の増加・情報不足・単独行動・装備不足など複合的な要因が重なって事故が起きやすくなっていると考えられます。
この記事では、警察庁の山岳遭難統計などの公的データも踏まえて、「なぜ外国人の遭難が目立つのか」を冷静に整理し、今後必要な対策まで解説します。
外国人の山岳遭難は本当に増えている?(警察庁データ)
まず前提として、外国人の遭難は「印象」だけで語られがちですが、警察庁の統計では数字として確認できます。
警察庁の「令和6年における山岳遭難の概況等」では、訪日外国人の山岳遭難について
- 発生件数:99件
- 遭難者数:135人
- 亡くなった人・行方不明:7人
とされています。
統計開始(平成30年)以降最多となった令和5年に次いで、令和6年は2番目に多い水準です。
このことから、コロナ後に訪日客が戻る中で、山岳遭難における訪日外国人の割合も一定程度注目されやすくなっていると考えられます。
富士山で外国人の遭難が多いと言われる理由5つ

理由① そもそも訪日観光客(登山希望者)が増えた
もっとも大きいのは、単純な「母数」の話です。
訪日観光客が増えれば、富士山を訪れる人数も増え、一定割合でトラブルや事故も増えやすくなります。
「外国人が多い=無謀」という単純な話ではなく、人が増えるほど事故も増えるという側面がまずあります。
理由② 富士山の“観光地イメージ”が先行しやすい
富士山は海外でも非常に有名で、旅行先として選ばれる機会が多い山です。
そのため、登山経験の少ない人でも「観光ついで」に登れる山だと誤解してしまうケースがあると指摘されています。
特に冬の富士山は、同じ富士山でも危険度が大きく変わるため、ギャップが事故につながりやすい面があります。
理由③ 冬季閉鎖(通行止め)のルールや危険性が十分伝わっていない可能性
静岡県では、夏山期間以外の富士山について、気象条件が厳しく危険であるとして、道路法第46条の規定により登山道を全面通行止めとしている旨を公式に案内しています。
また静岡県警も、富士山5合目〜山頂の登山道が閉鎖中であること、違反した場合には「6カ月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金」に処される可能性があると注意喚起しています。
一方、訪日外国人の場合は
- 日本語の看板・告知が理解しにくい
- 閉鎖=立ち入り禁止(法律)だと認識しづらい
- SNSの断片情報で判断してしまう
などの要因で、ルールや危険性が十分伝わっていない可能性があります。
理由④ 単独登山(1人登山)が多くなりやすい
警察庁統計では、単独登山の亡くなった人・行方不明割合は13.7%で、複数登山(2人以上)の5.9%より高いとされています。
旅行中は同行者を確保しづらいこともあり、結果的に単独行動になりやすい点はリスク要因になります。
理由⑤ 装備不足・冬山経験不足
冬の富士山では、積雪・凍結・強風・視界不良などが重なることがあります。
軽装や雪山経験不足のまま登ると、転倒や滑落、低体温症など重大事故につながる危険性が高まります。
ただし、装備不足は外国人に限った話ではなく、日本人でも毎年発生しています。
実は「国籍の問題」ではなく、遭難の多くは共通パターン
警察庁の統計では、山岳遭難の態様(原因)は
- 道迷い(30.4%)
- 転倒(20.0%)
- 滑落(17.2%)
が上位です。
つまり、富士山の遭難は「外国人だから起きる」ものではなく、
(情報不足+無理な行程+準備不足)
が重なることで、誰にでも起こり得るものです。
今後必要な対策:多言語周知とルールの徹底
富士山の遭難を減らすには、外国人批判ではなく、現実的な仕組みづくりが重要です。
- 冬季閉鎖・罰則の多言語周知
- 登山口での警告強化(現地掲示・スタッフ)
- 登山計画・装備基準の啓発
- 冬季は事実上“登らない”文化の定着
閉山期の救助は救助隊にも大きな危険が伴うため、救助費用のルール整備(有料化議論)が起きる背景にもなっています。
まとめ
最後に要点です。
- 訪日外国人の山岳遭難は統計上も一定数あり、令和6年は99件・135人
- 富士山の遭難が目立つ理由は「母数増加」「情報の壁」「単独行動」「装備不足」など複合的
- 遭難は国籍の問題ではなく、共通パターン(道迷い・転倒・滑落)が多い
- 多言語周知・ルール徹底など実効性のある対策が重要
富士山は美しい観光地である一方、冬季は命に関わる危険な山になります。
安全に楽しむためにも、正確な情報とルールの徹底が必要です。

