2026年6月、第175回直木賞の候補作が発表され、蝉谷めぐ実さんの『見えるか保己一』が候補入りしました。
蝉谷めぐ実さんは、江戸歌舞伎や時代小説を得意とする注目の小説家です。
デビュー作『化け者心中』以降、複数の文学賞を受賞しており、「どんな経歴の作家なの?」と気になった人も多いのではないでしょうか。
この記事では、蝉谷めぐ実さんの経歴や学歴、歌舞伎に惹かれた理由、代表作や受賞歴についてまとめます。
蝉谷めぐ実の経歴プロフィール

蝉谷めぐ実さんは、1992年生まれの大阪府出身の小説家です。
歴史小説・時代小説を中心に執筆しており、江戸歌舞伎を題材にした作品で高く評価されています。
| 名前 | 蝉谷めぐ実(せみたに めぐみ) |
|---|---|
| 生年 | 1992年 |
| 出身地 | 大阪府 |
| 職業 | 小説家 |
| ジャンル | 歴史小説・時代小説 |
| デビュー作 | 『化け者心中』 |
大学卒業後は広告代理店に勤務。
その後、早稲田大学の職員として働きながら執筆活動を続けていたことでも知られています。
2020年には、蝉谷魚ト(せみたに・とと)名義で応募した『化け者心中』で第11回小説野性時代新人賞を受賞。
デビューにあたり、現在の「蝉谷めぐ実」名義に改めました。
会社員として働きながら小説を書き続け、デビュー後わずか数年で数々の文学賞を受賞している実力派作家です。
蝉谷めぐ実の学歴は?早稲田大学文学部出身
蝉谷めぐ実さんは、早稲田大学文学部を卒業しています。
専攻は演劇映像コースで、卒業論文では文化文政期の歌舞伎をテーマにしていました。
文化文政期とは、江戸時代後期の文化・文政年間を指します。
大学では歌舞伎研究の講義を受け、江戸時代の役者たちの生活や芸談、女形のあり方などに強く興味を持つようになったそうです。
この大学時代の学びが、のちの『化け者心中』や『おんなの女房』などの作品につながっていったと考えられます。
蝉谷めぐ実は子どもの頃から本好きだった
蝉谷めぐ実さんは、子どもの頃から本に囲まれた環境で育ちました。
祖母は高校の古典の先生、祖父は社会の先生、父親は医師で、家には古典や歴史、漫画など幅広いジャンルの本があったそうです。
幼い頃の読書体験としては、絵本の『三びきのやぎのがらがらどん』や『めっきらもっきら どおんどん』などを挙げています。
小学生の頃には、夢枕獏さんの『陰陽師』にも親しんでいたといいます。
また、祖父の部屋にあった歴史系の図鑑や、父親が持っていた『うしおととら』『ブラック・ジャック』などの漫画も読んでいたそうです。
本好きでありながら、外では虫取りや木登りをする活発な子どもでもありました。
このように、幼少期から物語や歴史、漫画などに自然と触れていたことが、作家としての土台になっているのかもしれません。
蝉谷めぐ実が歌舞伎や時代小説に惹かれた理由
蝉谷めぐ実さんは、小学生の頃に祖母に連れられて歌舞伎を観に行った経験があります。
ただ、当時から強く歌舞伎に惹かれていたわけではなく、「歌舞伎に行った」と学校で自慢できるくらいの気持ちだったそうです。
本格的に歌舞伎の面白さを再発見したのは、早稲田大学時代でした。
大学1年生の頃に受けた歌舞伎研究の講義で、江戸時代の役者たちの生活や芸談、女形の存在に強い関心を持つようになったといいます。
特に、女形が舞台の上だけでなく日常生活でも女性として過ごしていたという話に興味を持ったそうです。
蝉谷さん自身も中学・高校で演劇部に所属していたため、役者が役に近づいていく感覚や、役者同士の野心・嫉妬といった部分にも惹かれたのかもしれません。
また、江戸時代の歌舞伎役者を応援する人々の熱量にも、現代の推し活に通じるものを感じていたようです。
こうした読書体験、演劇経験、歌舞伎研究が重なり、江戸歌舞伎を題材にした作品へとつながっていきました。
蝉谷めぐ実は演劇部出身だった
蝉谷めぐ実さんは、中学時代に卓球部を経験した後、演劇部に入りました。
高校でも演劇部に所属し、演じる側として舞台に立っていたそうです。
高校時代には、本谷有希子さんの『遭難、』や鴻上尚史さんの脚本などにも触れていました。
演劇部では、台詞の一つひとつを大切にする感覚や、人物の内面を考える経験を重ねていたようです。
現在の作品でも、登場人物の心情や言葉の響きを丁寧に描く作風が評価されています。
演劇部での経験も、作家としての表現に影響しているといえそうです。
蝉谷めぐ実が作家を目指したきっかけ
蝉谷めぐ実さんが本格的に小説を書こうと思ったきっかけは、大学時代に三島由紀夫の作品に出会ったことでした。
講義で三島由紀夫の『真夏の死』を読む機会があり、その文章の美しさに衝撃を受けたそうです。
その後、「一生をかけてでも作家になろう」と決意し、小説を書き始めました。
最初は現代小説を書いて新人賞に応募していましたが、なかなか結果は出ませんでした。
やがて「賞を取るための作品」ではなく、「自分が本当に好きなものを書こう」と考え、江戸歌舞伎を題材にした時代小説に挑戦。
その結果、生まれたのがデビュー作『化け者心中』でした。
好きなものに対して徹底的に調べ、納得できるまで書く姿勢が、蝉谷めぐ実さんの大きな強みといえそうです。
蝉谷めぐ実の代表作と受賞歴
蝉谷めぐ実さんは、デビュー以降、多くの文学賞を受賞しています。
主な代表作と受賞歴をまとめます。
『化け者心中』
蝉谷めぐ実さんの名前を一躍有名にした作品が、2020年に刊行された『化け者心中』です。
同作は第11回小説野性時代新人賞を受賞し、デビュー作ながら大きな話題となりました。
物語の舞台は江戸時代の歌舞伎界。
かつて絶大な人気を誇った女形・魚之助と、心優しい鳥屋の青年・藤九郎が、芝居小屋に紛れ込んだ「鬼」を探すことになります。
一見すると時代小説ですが、ミステリー要素も強く、歌舞伎役者たちの嫉妬や野心、人間関係が複雑に絡み合う作品として高い評価を受けました。
特に読者からは、魚之助と藤九郎の絶妙な関係性が人気を集めています。
また、江戸時代の歌舞伎文化や推し文化がリアルに描かれている点も魅力のひとつです。
現代のアイドルファン文化にも通じる要素があり、時代小説に馴染みのない読者からも支持を集めました。
さらに、格差や才能、ルッキズム、ジェンダーなど現代にも通じるテーマを扱っていることから、「新しい時代小説」として注目されています。
この作品で蝉谷めぐ実さんは、日本歴史時代作家協会賞新人賞と中山義秀文学賞を受賞し、一躍時代小説界の新星として注目される存在となりました。
『おんなの女房』
『おんなの女房』は、女形に嫁いだ女性を主人公にした時代小説です。
歌舞伎役者を支える妻の姿だけでなく、当時の社会の中で生きる女性の思いや葛藤を描いた作品として評価されました。
この作品で、野村胡堂文学賞と吉川英治文学新人賞を受賞しています。
『万両役者の扇』
『万両役者の扇』は、江戸時代の歌舞伎界を舞台にした時代小説です。
物語は、森田座の人気役者・今村扇五郎に心を奪われた女性・お春を中心に展開します。
芸に人生を捧げる扇五郎の圧倒的な才能は、多くの人々を魅了する一方で、その情熱は周囲の人間関係や運命を大きく狂わせていきます。
やがて若手役者の殺人事件が発生し、歌舞伎界に不穏な空気が広がっていきます。
芸を極めることへの執念や嫉妬、憧れ、人間の業が絡み合う重厚な物語で、「芸のためならどこまで許されるのか」という問いを読者に投げかける作品です。
歌舞伎役者たちの生き様と人間ドラマが高く評価され、2024年には第15回山田風太郎賞を受賞しました。
『見えるか保己一』
『見えるか保己一』は、盲目の国学者・塙保己一を題材にした作品です。
2026年に第39回山本周五郎賞を受賞し、第175回直木賞候補にも選出されました。
蝉谷めぐ実さんにとって、直木賞候補入りでさらに注目度を高めた作品といえます。
蝉谷めぐ実が直木賞候補に選ばれ話題
2026年6月、第175回直木賞の候補作として、蝉谷めぐ実さんの『見えるか保己一』が選ばれました。
同じ直木賞候補には、朝倉かすみさんの『けんぐゎい』、凪良ゆうさんの『多類婚姻譚』、原田ひ香さんの『#台所のあるところ』、若林正恭さんの『青天』も選出されています。
蝉谷めぐ実さんは、すでに山本周五郎賞や山田風太郎賞などを受賞しており、今回の直木賞候補入りによってさらに注目を集めています。
33歳という若さで時代小説界の注目作家となっており、今後の活躍にも期待が高まります。
蝉谷めぐ実の人柄は?好きなものに全力な努力家
インタビューなどからは、蝉谷めぐ実さんの「好きなものに全力で向き合う」人柄が伝わってきます。
子どもの頃は本好きでありながら、外では目立ちたがり屋な一面もありました。
小中高時代は競争心が強く、成績や進学に対してかなり真剣に向き合っていたそうです。
また、好きな作家や作品、歌舞伎、お笑い、ゲームなどにも深くのめり込むタイプのようです。
小説を書く際にも、資料を徹底的に読み込み、登場人物の動作や台詞の細部まで考えるといいます。
そのこだわりの強さが、作品の濃密な世界観や人物描写につながっているのではないでしょうか。
まとめ
蝉谷めぐ実さんは、1992年生まれの大阪府出身の小説家です。
早稲田大学文学部で演劇映像コースを専攻し、大学時代に歌舞伎研究や三島由紀夫の作品に影響を受けました。
広告代理店勤務や早稲田大学職員を経て、2020年に『化け者心中』で作家デビュー。
その後、『おんなの女房』『万両役者の扇』『見えるか保己一』などで文学賞を次々と受賞しています。
2026年には『見えるか保己一』で直木賞候補に選ばれ、時代小説界の注目作家としてさらに話題になっています。
歌舞伎、演劇、読書への深い愛情と、徹底した調査力を武器に、今後も多くの作品を生み出していきそうです。

