冷凍食品や低温物流を手がけるニチレイがサイバー攻撃を受け、システム障害が発生しました。
その後、「ランサムハウス(RansomHouse)」と呼ばれるハッカー集団が、ダークウェブ上に犯行声明を出したと報じられています。
ニュースを見た人のなかには、
- ランサムハウスとは何者?
- どこの国のハッカー集団なの?
- 二重脅迫とはどういう意味?
- なぜ犯人を捕まえられないの?
と気になった人も多いのではないでしょうか。
この記事では、ニチレイで起きたシステム障害の経緯と、ランサムハウスの特徴、二重脅迫の手口について分かりやすくまとめます。
ニチレイで何があった?
ニチレイは2026年7月13日、不正アクセスによるシステム障害が発生したと発表しました。
障害の影響を受けた主な業務は、次のとおりです。
- ニチレイロジグループ各社の冷蔵倉庫の入出庫業務
- ニチレイフーズの冷凍食品出荷業務
ニチレイは発生当日に緊急対策本部を立ち上げ、外部のセキュリティ専門会社の支援を受けながら調査を開始しました。
その後の調査で、一部のサーバーがサイバー攻撃を受けていたことが確認されています。
被害を受けたサーバーの一部には個人情報が保管されていたため、ニチレイは個人情報保護委員会へ「情報漏えいの可能性がある事案」として報告しました。
ただし、現時点で個人情報や顧客データが実際に外部へ流出したと確定したわけではありません。
冷蔵倉庫の入出庫業務や冷凍食品の出荷業務については、一部制限を設けながら順次再開されています。
ランサムハウスが犯行声明を出したと報道
共同通信などの報道によると、ランサムハウスと呼ばれるハッカー集団が、ダークウェブ上に犯行声明を出したことが判明しました。
声明では、機密データの流出を防ぐため、ニチレイ側に連絡するよう求めているとされています。
ただし、ランサムハウスが犯行声明を出したことと、同集団による攻撃だと公的に確認されたことは同じではありません。
サイバー犯罪集団が注目を集めるため、実際には関与していない事件について犯行を主張する可能性もあります。
ニチレイはこれまでの公式発表で、攻撃を行った集団の名前や具体的な手口を明らかにしていません。
そのため現段階では、
「ランサムハウスがニチレイへの攻撃を主張している」
という表現が適切です。
ランサムハウスとは何者?
ランサムハウスは、企業や組織から重要なデータを盗み、公開されたくなければ金銭を支払うよう迫るサイバー犯罪集団です。
2022年ごろから活動が広く確認されるようになりました。
一般的なランサムウェア集団は、企業のデータを暗号化して使用できなくしたうえで、復旧と引き換えに身代金を要求します。
一方、ランサムハウスは活動初期から、データを暗号化することだけでなく、機密情報を盗んで公開すると脅す「データ恐喝」を重視してきたとされています。
さらに、自分たちを単なる犯罪者ではなく、企業のセキュリティ上の欠陥を指摘する存在であるかのように演出してきたことも特徴です。
「十分なセキュリティ対策をしていない企業側にも責任がある」といった主張を行うことがありますが、不正にシステムへ侵入し、盗んだ情報を材料に金銭を要求する犯罪行為であることに変わりはありません。
ランサムハウスはどこの国の集団?
ランサムハウスがどこの国を拠点としているのかは、公式には確認されていません。
ダークウェブや匿名性の高い通信手段を利用する犯罪集団の場合、サイトの表示言語や投稿時間だけで所在地を特定することは困難です。
また、ランサムウェア攻撃では、ウイルスを開発する人物、攻撃用のシステムを運営する人物、実際に企業へ侵入する人物が別々の国にいることもあります。
そのため、現時点で特定の国の集団だと断定することはできません。
ランサムウェアとは?
ランサムウェアとは、パソコンやサーバーに保存されたデータを暗号化し、使用できない状態にしたうえで、復旧と引き換えに金銭を要求する不正プログラムです。
「Ransom(身代金)」と「Software(ソフトウェア)」を組み合わせた言葉です。
企業がランサムウェアの被害に遭うと、社内のパソコンが使えなくなるだけではありません。
- 商品の受注や出荷ができない
- 工場や倉庫のシステムが停止する
- 取引先との連絡が取れなくなる
- 顧客情報が流出する可能性がある
- 復旧や調査に多額の費用がかかる
といった深刻な影響が発生します。
今回のニチレイのケースでも、冷蔵倉庫の入出庫や冷凍食品の出荷に影響が出ました。
食品や物流を担う企業への攻撃は、その会社だけでなく、スーパーや飲食店、取引先などにも影響が広がる可能性があります。
二重脅迫とは?
ランサムウェア攻撃で近年増えているのが「二重脅迫」です。
従来のランサムウェアは、データを暗号化して使用できなくし、
「元に戻してほしければ身代金を支払え」
と要求する手口が中心でした。
しかし、企業がバックアップを用意するようになると、データを暗号化されても、身代金を支払わずに復旧できるケースが増えました。
そこで攻撃者は、データを暗号化する前に企業の情報を盗み出し、
「身代金を支払わなければ盗んだ情報を公開する」
という脅しを加えるようになったのです。
つまり、
- データを暗号化して業務を止める
- 盗んだ情報を公開すると脅す
という2段階の圧力をかけるため、「二重脅迫」と呼ばれています。
バックアップからシステムを復旧できても、すでに盗まれたデータを取り戻すことはできません。
個人情報や取引情報、社内資料などを公表すると脅されるため、企業にとって非常に厄介な手口です。
MrAgentやMarioとは?
セキュリティ企業の分析では、ランサムハウスの攻撃に「MrAgent」や「Mario」と呼ばれるツールが使用される場合があると報告されています。
MrAgentとは
MrAgentは、企業で利用される仮想化環境を標的として、攻撃を効率化するためのツールとされています。
仮想化環境とは、1台の物理サーバー上で複数のシステムを動かす仕組みです。
多くの企業が利用しているため、この環境を一括して攻撃されると、複数の業務システムが同時に停止する可能性があります。
Marioとは
Marioは、侵入先のファイルを暗号化するランサムウェアとして分析されています。
ただし、MrAgentやMarioが今回のニチレイへの攻撃で使用されたと確認されたわけではありません。
あくまで、ランサムハウスが過去の攻撃で使用してきたと分析されているツールです。
ニチレイの事件と直接結び付けて断定しないよう注意が必要です。
RaaSとは?攻撃者が分業している
ランサムハウスは「RaaS」と呼ばれる仕組みを採用していると、セキュリティ企業から分析されています。
RaaSとは「Ransomware as a Service」の略で、日本語では「サービスとしてのランサムウェア」と訳されます。
ランサムウェアの開発者や運営者が、攻撃に必要なウイルスやデータ公開サイトなどを別の攻撃者へ提供する仕組みです。
実際に企業へ侵入する人物は「アフィリエイト」と呼ばれることがあり、身代金を得た場合は、運営者と利益を分け合います。
この仕組みによって、高度なプログラムを自分で開発できない人物でも、ランサムウェア攻撃に参加できるようになりました。
そのため、同じランサムウェア集団の名前が使われていても、実際の侵入や攻撃を担当した人物は事件ごとに異なる可能性があります。
なぜランサムハウスを捕まえられないの?
ヤフーコメントでは、
「犯行声明まで出しているのに、なぜ捕まえられないのか」
という疑問も多く見られました。
サイバー犯罪集団の摘発が難しい理由としては、主に次のようなものがあります。
匿名性の高い通信手段を使っている
犯罪集団は、通信経路を複雑にして発信元を分かりにくくする技術や、通常の検索エンジンでは表示されないダークウェブを利用します。
そのため、犯行声明が掲載された場所だけを調べても、実際に操作している人物の所在地を突き止められるとは限りません。
複数の国をまたいで活動している
攻撃者、サーバー、被害企業、身代金の送金先が、それぞれ別の国にあるケースもあります。
海外にいる容疑者を逮捕するには、現地当局との情報共有や捜査協力が必要です。
国ごとに法律や捜査権限が異なることも、摘発を難しくする要因です。
第三者の機器を踏み台にする
攻撃者が、不正に乗っ取ったサーバーや家庭用ルーター、流出したIDやパスワードを利用することもあります。
通信記録を追跡しても、最初にたどり着くのは攻撃者本人ではなく、攻撃の中継地点として悪用された第三者の機器という場合があります。
暗号資産で支払いを要求する
身代金の支払いには、暗号資産が利用されることがあります。
取引履歴自体は記録されますが、複数の口座や交換サービスなどを経由させることで、最終的な受取人の特定が難しくなる場合があります。
ただし、サイバー犯罪集団が絶対に捕まらないわけではありません。
各国の捜査機関が連携し、サーバーの押収やサイトの閉鎖、関係者の逮捕に至った例もあります。
身代金を払えばデータは戻ってくる?
身代金を支払ったとしても、データが必ず復旧する保証はありません。
攻撃者から暗号化を解除するための鍵が送られてこない可能性や、送られてきたツールが正常に動作しない可能性もあります。
さらに、一度支払いに応じた企業が、
「金銭を支払う可能性がある標的」
として認識され、再び攻撃を受ける恐れもあります。
盗まれたデータについても、攻撃者が「削除した」と説明しても、本当に複製が残っていないか確認する方法はありません。
身代金の支払いが犯罪集団の資金源となり、次の攻撃につながるという問題もあります。
そのため、攻撃を受けた企業には、警察やセキュリティ専門会社などへ速やかに相談し、慎重に対応することが求められます。
ニチレイから個人情報は流出した?
ニチレイの発表では、被害を受けたサーバーの一部に個人情報が保管されていたことが明らかにされています。
そのため、ニチレイは個人情報保護委員会へ「漏えいの可能性がある事案」として報告しました。
しかし、現時点で個人情報の外部流出が確定したとは発表されていません。
ランサムハウス側は機密データを入手したことを示唆していると報じられていますが、犯罪集団による主張だけで、流出した情報の内容や量を確定することはできません。
今後、ニチレイの調査で情報漏えいが確認された場合は、対象者や影響範囲などが改めて公表される可能性があります。
ヤフコメでは国際協力を求める声
今回の報道に対するヤフーコメントでは、サイバー犯罪集団を摘発するため、各国が情報を共有して捜査する必要があるという意見が多く見られました。
また、
- 関連企業や取引先を含めたセキュリティ対策が必要
- 定期的なバックアップが重要
- 身代金を支払わない仕組みを作るべき
- 食品や物流など生活に関わる企業への攻撃が怖い
といった声も寄せられています。
一方で、「本気で狙われたら防ぎようがない」という意見もありました。
確かに、すべての攻撃を完全に防ぐことは難しいでしょう。
しかし、多要素認証の導入、ソフトウェアの更新、ネットワークの監視、オフラインバックアップなどを組み合わせることで、侵入や被害拡大のリスクを下げることは可能です。
まとめ
今回は、ニチレイへの攻撃を主張しているランサムハウスについてまとめました。
- ランサムハウスはデータの窃取や暗号化を利用して金銭を要求するサイバー犯罪集団
- 2022年ごろから活動が広く確認されている
- 拠点となる国やメンバーの正体は公表されていない
- データの暗号化と情報公開の脅しを組み合わせる手口は「二重脅迫」と呼ばれる
- ニチレイでは冷蔵倉庫の入出庫や冷凍食品の出荷に影響が出た
- 個人情報が保管されたサーバーも被害を受けたが、情報流出は現時点で確定していない
- ランサムハウスは犯行を主張しているが、ニチレイは攻撃者を公式に特定していない
ニチレイは業務を順次再開していますが、サイバー攻撃の原因や情報漏えいの有無については、引き続き調査が必要です。
身近な冷凍食品や物流に関わる企業が攻撃されたことで、ランサムウェアは企業だけの問題ではなく、私たちの生活にも影響する脅威であることが改めて浮き彫りになりました。
今後、新たな発表があった場合は、ハッカー集団の犯行声明だけで判断せず、ニチレイの公式情報を確認することが大切です。

